東京へ戻った時

会社を退職したあと、東京へ引っ越し
大学時代にも住んでいたので勝手知ったる場所なのだけど、贅沢はできないと考えていたため、家賃25000円のアパートを決める
風呂はないけどトイレはあったため、十分な物件ではありました
高校時代にも同じような環境に下宿してた経験があったので、こういった環境に抵抗感はなかったのです
1Fに2世帯、2Fに4世帯あり、1Fの一つには大家さんが住んでいて片方は空き、2Fの二部屋も倉庫として使われていて、もう一人の住人はほとんど部屋にいなかったのでこのアパートには人がいないようなものだったのです
これほど集中できる環境もなく、その後関東圏をあちこち引っ越しすることになるのだけど、この安アパートは自分にとっては一番の執筆環境でした
綺麗な外観の建物も最新の設備も、住人によっては簡単に台無しになるのですから

しかし一方では悪いことも起こりました
退職後あてにしていた漫画仕事がいきなりふいになったです
退職前に約束していた案件だったのですが、ぼくの提出した絵をみるなり編集者は怒り出し、仕事はキャンセルになりました
何が起きたのかさっぱりわかりませんでした
編集者にとって都合の良い案件があったので、怒ったふりをして潰しにきたのだろうか?そんな訳はないな、とか考えました
おそらく、その編集者はぼく力量を見誤っていたのだろう、と最終的に結論づけました
つまり、できるやつだと思ってたけど、そうじゃなかった
当時はまだポートフォリオなんて習慣もなかったので、伝わっている情報はわずかでしたからそういったこともよく起きていたのではないでしょうか
(今でもたくさん起きていると思うけど)

その経緯もあって、それまでの自分はジャンプ漫画のようなシンプルな作画を好んでいましたが、説得力のあるクオリティの高い絵作りもこなせるようになりたいと思うようになっていました
ひとまず、どこかアシスタントをやれるところを探そうと考え始めていました

最初の転職のとき

漫画家になろうとメーカーを退職しようとした時、自分の中には様々な想いがありました
それは単純な理由でなくて、ずっと複合的なものだったと記憶してます

安定と収入を求めて入社した会社だったけど、配属先のこともあって思ったほど収入はよくなかったこと
直接的に消費者と接する仕事とことなり、驚くほど働いている実感がなかったこと
当時はまだ巨大なものでなかったとはいえ、ネット越しに人と繋がる機会はあり、描いた絵を反応をもらえて喜んでいたこと
同人誌づくりが、自分にとってはとても充実したものののように感じていたこと、これを歳をとるまで休日祝日にこなすだけのものにして良いのかと考えていたこと
兄弟に「お金があるんだろう」と思われていたらしく、安易にお金の無心をされてがっかりしていたこと
漫画づくりというものに、自分がまだずっと期待していたこと
自分はけして大学での成績はよくなかったけど、同期入社した人はずっとひどくて、彼が下請けの上に立つのかとぞっとした気持ちを抱いていたこと
会社の豊満さに不安を抱いていたこと(結局これは現実のものになりましたが、多分他の社員の人も当時から感じてたのではないかと思います)

よく、「会社を辞めたことを公開してるのでは?」、という風に聞かれることもありますが、正直そういう気持ちは抱いたことは一度もなかったです
そしてまた、入ったことも後悔はしていないのです
いずれも「してみなければわからなかったこと」だとは確信してもいます

漫画を廃業するにあたり

まだ確定じゃないけど、気持ちは決まってるようなものなので、
つらつらと今の気持ちを書いてきます

今は、時間とお金をドブにしてきたような気持ちでいっぱいではあります
いや、いい時期もあったのはたしかです
委託同人で憧れのシリーズを続けて、東方の二次創作をやって、それがどっちも評判よくて売れてくれたこととか
ラブライブの漫画や絵をツイッターに上げてわいわいやれてたこととか
感謝もしきれないのは確かなのですが、やはり現在のことではないのです

ただ、今の自分が救われていることはあります
6月辺りから原稿を手伝ってもらっている方が3人いて、そのうち二人はまだ未熟で教えてるって状況ではあるのですが
まじめに学んでくれていることです

漫画家を本当の意味で育てられるのは、漫画家でしかないはずなのです
編集者も漫画家を育てた、といった言葉で語られることもありますがクライアントであって師ではありません(アレはある種の修辞の類でしょう)
しかし、漫画家志望者や本職が勝手に学んできて(或いは「盗んで」きて)、それをスキルマッチしてる労働してるというのが実情だと思います
名のしれた作家やイケイケの職場は特に志望者も集まりやすく、熱心な編集者が斡旋してくるので、よりこの傾向は顕著になります
教えること、つまり、自分たちの仕事場の仕事の「教育」を整備してやっている人は実のところあまり居ない
少なくとも、自分が経験した場ではそういった仕事場を経験したことはなかったです.漫画という仕事については
だから本腰入れて「漫画を教える」ということも自分はしてこなかったように思います

それは砂漠みたいに孤独で、そしてまたあまり効率的なものではなかったと振り返ってみて感じます
二人には、ぼくが別の職にうつっても最後まで教えると約束しています
教えてる内容は初歩の初歩の、とても簡単なところです
聡い人なら本を読んで、さっと習得して終わり、みたいな
でも、それじゃ足りないので、ドキュメントを整備し、動画を作り、さらにスクリプトもかいて、さらにマンツーマンで話をする

それでできるようになるし、習得してしまえば、できる人と差はありません
時間を無駄にしてるとも思いません

漫画家を志望するひとも、別の仕事を目指すひとも、特に未熟なうちは、よい学びの場に出会えることを大事にして欲しいなと、切に思います

blog再開してきます

長い間、放置状態だったblog使うのを再開します

放置していた理由はソーシャルなコミュニケーション用途がtwitterやpixivに移っていってblogは廃れた、と考えていたからです

ただ、ああいった場所は個人的な見方での言葉は発信しづらいな、と思うようになりました
なによりタイムラインの流れが早いので言葉はさっと流し見されやすく、落ち着いて読んでもらうための言葉を発するには向かないな、と

このblogでは、自分の作風が何で、何をしたいのかを明示する場所として使っていく考えです