アシスタントの生活は、ぼくの人生にとっては最も呪われた時間でした
社会人経験もバイトの経験もないというその漫画家の職場、
チームのといってもそれは部活動のそれ
部活と違うのは徹夜や長時間労働があること、
もっとも、当の漫画家本人は月に20から40ページの漫画の
ネームと下絵をしたらあとはアシ任せで悠々自適にあそんでいました
漫画を描く人が、たとえ寝不足でも体を壊しても、社会的立場もお金もなくても無理をして描くのは、それが自分の作品だからでしょう
単なる「安く働ける労働者」ではありません
「漫画は集金装置」と豪語するその人が、ほとんど体も動かさず、安く働かせるにはスジが通っているようには、
自分にはどうしても考えられませんでした
何がしかの信念があれば、また違ったのかもしれません
職場の人が次々と離れてき、また補充されているのがわかりました
普通の職場なら、それでまともに働く人がいなくなるやもしれません
しかし、編集者がせっせと志望者という名の労働者を補充するので、省みることもないのだろうと思いました
もしこの流れが切れる時が来るとしたら、それは作品の人気が無くなったときなのだ、これがルールなのだ、と理解しました
その職場の、漫画家はクソガキの王様で、アシスタントはクソガキの王様の奴隷でした
ぼくの目にはずっと、彼がゲーム・オブ・スローンズに登場する、ジョフリー王のようにみえていました
漫画を仕事にする上で、最も恐ろしいのは、読者の目でも、編集者のリテイクでもなく、無法な漫画家の下で働くという状況なのだということを知ったのでした
全ての漫画家が彼のようだとは思いません、しかし、少数派だとも、やはり思えませんでした
合間に継続していたゲームアンソロの仕事も入れていましたが、1年半とすぎる頃には、貯金が尽きかけていました
職場を去る頃に、治験というのに参加して所持金を補充しました
アシスタントをしている時期の間に、祖父が死ぬとの連絡が実家からあったのですが、戻ることはかないませんでした
自分は当時、漫画家になるため縁を切って出てきたのですが連絡だけは一方的に送られていました