個人の時代

東方の界隈はとても賑やかでした

当時の即売会は、大抵早い時間に大手に人が群がり、買い物が終わると
さっさと皆帰ってしまうような場所でした
サンクリくらいの規模だと12時くらいにはもう閑散としていて、13時くらいにはどんどんサークルが
帰っていくので空いてるブースがまばらに出来る状況でしたが、
例大祭では殆どのサークルの本は売れていて、嬉しそうにしていました
音屋の人たちの音楽もBGMとして使われていたので、耳の面でも楽しめる空間ができているようでした
東方とついていれば何でも売れるような状態だったのかもしれません
みな明るい顔をしていました
皆が皆お互いに作品を認めて楽しんでいるようでした

当時の編集さんに話したら、「バカバカしくて商業なんてやってられませんね!」と言われてしまいました
自分もこの波にうまく乗れていればもっと良い状況にまで進められたのかもしれませんが、残念なことに次の年の
本で酷い写植ミスをして、それが1種類の本の即売会で売れた分の最大記録になりました
1050部くらいだったと記憶しています

今振り返っても、不思議な状況でした
委託書店が規模を拡大していっていたこと、インターネットの普及で出版社を通さない作品作りが都心部のみにとどまらず
地方にまで届くようになったこと、東方という作品が二次創作をしやすかったこと、漫画やゲーム、アニメの洗礼を受けた人たちの多い世代だったこと
いろいろと理由が重なったのかもしれません
企業に縛られることもなく、クソガキの王様みたいなのの下で働かされることもなく
どこかでいつか自分も自分の創作物でタイプムーンや上海アリスのようになれるのでは、と期待してもいるような
個人の時代の始まりを謳歌してるようでした