成人向け漫画を1誌で受けることに不安を覚えていたぼくは別の出版社でも仕事をやるように決めました
編集者はフリーの編集者で、決まったので描いてくれ、という話になりました
レイプモノの専門誌でした
当時はレイプものが流行っていて、そういうものだけを集めた雑誌を作るようでした
嫌な予感がしました
それまで平穏なテーマをベースにゆるい一般向け漫画とエロ漫画を始めていた自分にとっては、おかしな組み合わせのように思いました
一般誌でも、ファンタジーアクションが描きたくて持ち込みしたのにラブコメを描くように誘導された人とかも知っていたので
その類かと思いましたが、何かが違っているようにも感じていました
今でこそはっきりと言えます
エロの読者は急激な方向転換を嫌う
この人には成人向けの編集をやっているけど、「エロの知見」がないのだろうか?
いつも自分のコネのことばかり話している
一般の人気作家の上京を手伝ったとか、ナントカさんと知り合いだとか
その割に、「今の若い人の流行はさっぱりでしてね」とか言ってる
ラブコメを担当している編集者はラブコメに詳しく、スポーツ漫画を担当している編集者はスポーツ漫画に詳しい
それまでつきあいのあったゲームアンソロの編集をしている人とても、少なからず二次創作がどういうものか知っていると認識していましたが
この人は違う、と感じました
ぶっこわしレイプはぼく自身嫌いでした
しかし、そのことよりもイメージ作りってものを蔑ろにしている点がずっと心を痛めました
これまで、少ないだろうけど、ぼくの作品を気に入って応援する気になってくれていた人に対してどう顔向けする?、と
それでも3本描き、その後は「貴方とは仕事はしない」と言って自分から関係を切りました
後で知ったことですが、その編集者は以前はグラビアの仕事をしており、その後はまた成人向け漫画とは別の編集業へと
移っていました
編集者は担当しているジャンルに知見があるとは限らない
ちょっと考えればあたりまえのことでした
クソガキの王様みたいな漫画家と同様、資格もなければ権威も学術的研究もされていない世界なのですから
誰でもなることができるということは、その人にとっては夢でも、共に仕事をする人間には大きなリスクとなりうる
編集者が原稿を受け取らない、といえばそれは本には載りません
そういう絶対的な権力がある
にも関わらず、その編集者が知見をもっているとは限らない
できるだけ早い段階で、資質を見抜く必要がある、と考え、
スパムフィルタのようなチェック機構を自分の中に作るようにしました
結局その後10年、そのフィルタが発動することはなかったのですが、ともかくもそれをきっかけに自分の中には
ひとつの安心感ができているようでした
しかし、一般漫画づくりに対しても、成人向け漫画づくりに対しても
その時の自分は完全に凹んでいて道を見失っていました
これからどうすればいいのだろう?