エロ漫画家をはじめる

携帯電話のデータ入力のバイトの期間が終わる頃、同人誌即売会でTくんと出会いました
彼は過去には大学時代に同人誌活動をして、一時期は壁サークルまでいったのですが、その時は衰退しているようでした
ジャンルはラグナロクオンラインでした
彼は絵が上手かったのですが、ギャルゲーベースの絵柄がファンタジーとはあまりマッチしていないようで、
組み合わせのミスマッチのせいか、少し古くさい絵柄のようになってしまっているように見えました
同人にはもうあまり興味がなく、一般漫画をめざしているそうでした
ぼくは彼のことがそれほど好きではなかったのですが、ぼくの経歴を知ると、いろいろと情報を引き出そうとしてきました
仕事が欲しければ、成人向けでよければ編集者を紹介する、と言ってきました

なるほど、アニメ化した作品づくりの職場がどんなだったかの情報と、(彼はもうエロに興味がなかったらしく)成人向けの漫画編集者の紹介の交換か
少しひっかかりましたが、そんなルートもあるんだな、と思いました

ぼく自身、同人誌を作ってこそいましたが、商業漫画のエロをやるのはあまり気がのっていませんでした
当時のエロ漫画はまだいまほど洗練されておらず、女のキャラクターが脱いだりセックスしたりしていても
読者を興奮させることをやれていない作品が多数でした
読者を魅了し、誘惑し、エレクトさせ、セックスを疑似体験させて射精までさせる
それをやるには何が必要で、何を学ばなければならないか、確立したものはほとんどなく、商業作家でもできている人はごくわずか
しかし、それがやれる人は余裕で家が買えるくらいには儲けているのもわかりました
シナリオの技術も、作画のクオリティも関係はあまりない、というのも見てわかりました

そのやり方が自分にはない、というのははっきりとわかっていました
編集者から学べるのだろうか?残念ながら担当の人は何も持っていませんでした
最もそれを持っていたと確信がもてたのは同世代の成人向け漫画家でMくんで、彼のところで2日ほど手伝いをしましたが
理論だったものはなにも得られませんでした

ほとんど徒手空拳のまま、商業誌の成人向け漫画をはじめましたが、みるみるうちに掲載順位は落ちていき、編集者とは仲が悪くなって仕事は終わりになりました